庭をつくるのイメージ

 家と庭の工事を両方まとめてハウスメーカーに依頼するという前提がなくなれば、少なくとも時間の制約からは解放されます。家が出来上がっていくのを眺めながら庭の構想をイメージする余裕も生まれ、庭作りをどの業者に依頼するべきか、時間をかけて選べるようになります。それでは造園会社を選ぶ際に何を基準にすれば良いのか、以下に大きなポイントを挙げてみます。

  1. 1.趣味


 最も重要なのは施主の趣味が業者のそれと似通っている、または施主の趣味を理解している業者であることです。庭は造園業者の作品ではなく施主のものです。庭が完成してからその庭を毎日眺めて暮らすのは施主なのですから、どういう庭にしたいのか抽象的でもいいので業者にハッキリ伝えましょう。業者の趣味を探る上で一番簡単なのは手掛けた庭を見せてもらうことです。更に不意打ちになりますがその業者の社長の家の庭を見せてもらうのも有効です。「好きこそものの上手なれ」ではありませんが、庭をつくるという作業は趣味的な部分が相当強く、家業としてやっているのか好きでやっているのかでは仕事に対する姿勢が根本的に異なります。経験を基に言えばいい庭をつくっている方の家には必ずいい庭があります。


  1. 2.自社施工


 設計だけを行って工事を他の業者に任せるところもありますが、これはお薦めできません。住宅に関連する業界が複雑且つ階層的になり過ぎて価格が膨らみ、最終的にその負担が全て施主に転嫁されることはこれまでに述べた通りです。住宅の場合、設計費は総工費の10%程度と言われますが、庭の場合も設計を専門とする事務所では同率程度かもしくはそれ以上になります。ただし様々な法的基準、設備等の制約に縛られる建築とは異なり、庭の場合の設計費は純粋にデザイン料と等しく、余程特定のデザイナーに依頼したい理由があれば別ですが、基本的にその価格は妥当とは言えません。更に実際のところは設計に特化している訳ではなくて、工事の監督や管理を含めてパッケージにしているケースが多く、この場合材料の調達までを行って業者には単純な土木工事のみを発注しています。住宅と同じパターンになりますが施主と工事業者の距離が開く程、職人のレベル、工事のレベルが下がります。電気工事や水道工事であれば問題となって生じるので明るみになりやすいのですが、自然の材料を扱う造園工事に関しては短期的に問題となって表われません。また半分は感性に任せられるところが大きいので許容されるラインが随分低くなっているように見受けられます。以前、名の知れた庭園デザイナーが手掛けた庭を見る機会があったのですが、貼り石の仕上がりがあまりに杜撰で驚かされました。それは数ある設計事務所の一部かもしれませんが、全ての工事に関してある程度の品質を保つには、また設計図面に描かれていない意図を汲み取り全体として調和の取れた庭を作り上げるには、設計と施工を一貫して行う必要性があると強く感じた経験でした。


  1. 3.管理


 設計と施工の一貫性に加えて、管理まで任せることのできる業者がより好ましいと思います。この際なので造園業者の本音を明かしてしまいますと、1年を通して造園工事だけで会社が回るのであれば事業としてそれに越したことはありません。工事には様々な経費が乗ります。石や木を据えたり植えたりする場合は商売なので仕入れ価格で売ることはありません。資格を伴う重機を用いる工事やいわゆる熟練の必要な工事については工賃に上乗せされます。一方で木を剪定する、庭を掃除するといった管理作業は大手の参入にも影響され、せいぜい東京横浜の都市圏では職人1人につき1日20,000円~25,000円が相場であり、事業としての利益率は工事より遥かに低いのが現状です。それでも管理の仕事が庭に関わる上で必要不可欠であることは断言します。大きな理由の一つは作った庭に責任を持つこと。庭は作った時点で完成ではありません。草木が生長し、石が馴染み、池や流れの水が落ち着くにはそれなりの時間が必要であり、実際に使う中で不都合が生じれば時によって修正が必要になるかもしれません。業者にとっては作れば終わりですがそこに住む人はその庭と何十年と付き合うわけで、その際に「引き渡した後なので知りません」では通用しません。業者は庭を作る過程で施主の嗜好を理解しているはずですし、また将来の庭の姿を想像できるのは作った業者であり、何か手を加える上でその庭を最も把握しているのも作った業者です。施主側に何らかの理由がない限り、自ら作った庭の管理を自ら行うということは自然な成り行きではないでしょうか。もう一つの理由は庭の管理を通してのみ身につけることの出来る感覚があるということです。何年も同じ木を剪定をすればその木の特性を知ることができます。日当りが必要と言われているけど若干の日照りがあれば花を咲かせるであるとか、横に広がって成長する木であるとか、実務を通しての体験は庭を作る上で非常に有効です。欧州原産の樹木は温暖な日本では旺盛に伸長します。ミモザやニセアカシアを植えたものの数年で大木になってしまい後悔している方の相談もよくあります。1年の内で2週間程は花がきれいでも花柄や落ち葉が細かく掃除に手間のかかる木もあります。畑から持ち込んだ状態ではなく5年後、10年後にどのような木になるのかを把握せずに植栽の計画はできません。用(機能)と景(美)のバランスを知ることも重要です。京都の社寺の庭は息を呑む程の美しさですが、その維持には相当の手間がかけられています。一般の住宅でも同じ手間をかけることができれば問題はありませんが、現実的には庭の維持に充てる時間と予算は限られています。庭のどこを作り込んでどこに間を空ければ管理面でコストを抑えることができるのか、この種類の感覚は様々な庭の手入れを通してのみ覚えるもので、景色を障ることなく機能面で充実した庭を設計する際に活かされます。


 以上のことをまとめると、庭作りを造園業者に依頼しようとした場合、趣味を理解して設計のみに偏らず設計者が自ら毎日現場で工事を行い、その後の管理まで任せることのできる業者を探すことが長期的に見て最も効率的かつ庭に関わる総コストを抑える選択であると思います。家を買う際、様々な資料を集めて検討に検討を重ねられるのは人生で最も大きな買い物をされる施主の強い思い入れがあってのことで当然です。敷地の少なくない面積を占め、家の印象を大きく変えてしまう庭や外構についても同様に色々な業者を当たり本当に満足のいく業者を選ぶ、その労は決して無駄になることはありません。なぜならハウスメーカーや工務店に庭のプロはいないからです。

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ホームいい庭をつくる家と庭>3.庭をつくる 3.1.庭をつくる 3.1.どこに頼むのか 3.1.2.造園業者